スポット価格の24時間移動平均が切り上がり、東京ベースロード先物価格とLNG先物価格と整合的な動きが確認される。電力市場の価格レンジが上方へシフトし始めている可能性がある。
株式会社Beyond Next Energyの上野徹です。
東京エリアの電力スポット価格(30分値)は、通常、日内周期の強いパターンを持って推移します。実際、足元のデータでも価格系列には24時間周期の構造が明確に確認されており、平常時にはこの日内パターンがスポット価格形成の重要な要素となっています。
図1 東京エリアスポット価格の自己相関(30分値)

このような市場では、昨日の同時刻の価格が今日の価格に影響する傾向が強く、概念的にはAR(48)型の構造として理解することもできます。
つまり、電力市場価格は短期的には非常に強い周期構造に支配されていると言えます。
しかし、直近の価格推移を見ると、この日内周期だけでは説明しにくい変化も現れています。
3月上旬から、東京エリアのスポット価格の24時間移動平均が明確に切り上がり始めているためです。
図2 東京エリアスポット価格(30分値)と24時間移動平均

30分値の価格は日内変動が大きく、短期的にはノイズのように見えることも多いですが、移動平均を見ると価格水準そのものが上昇方向にシフトし始めていることが確認できます。
これは単なる日内変動ではなく、市場の価格レンジ自体が変化し始めている可能性を示唆しています。
同時に、東京ベースロード先物市場では、3月以降の価格がすでに比較的高い水準で形成されていました。
図3 東京ベースロード電力先物のフォワードカーブ

先物市場が先に上昇し、その後スポット市場でも水準の上方移行が起き始めていると見ると、足元の動きには一定の整合性があります。
背景にあるのは、LNGなど燃料価格の上昇、需給の引き締まり、またそれらを踏まえた市場参加者の価格見通しの修正です。
図4 LNG先物価格(JKM)の直近推移

電力市場では、燃料価格や需給見通しの変化がまず先物市場に反映され、その後、実需給を反映するスポット市場に徐々に波及します。
足元の動きも、そのようなプロセスの初期局面として捉えることは可能です。
もっとも、今回のデータだけから、先物価格がスポット価格を統計的に有意に先行していると断定することはできません。
サンプル期間はまだ短く、厳密な因果関係を示すには材料が十分ではないためです。
しかし、先物市場がすでに高い価格水準を形成していた中で、スポット市場の価格水準自体が切り上がり始めている点は、無視できない変化です。
電力市場では、日内周期の波形が変わらなくても、その波の高さ(価格レンジ)そのものが上方へシフトする局面がしばしば見られます。
今回の動きが燃料価格や需給環境の変化を背景とした水準訂正の初期局面であるなら、今後はスポット価格のレンジ自体が段階的に上昇していく可能性もあります。
現時点では、東京市場は依然として日内周期に強く支配されているものの、価格水準そのものには上方修正の兆候が現れ始めていると捉えるのが適切かもしれません。
今後の市場動向を把握するうえでは、
• LNGなど燃料市場
• 電力先物市場
• 実需給を反映するスポット市場
この三つをあわせて追っていくことが、これまで以上に重要になりそうです。
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