㈱Beyond Next Energy代表取締役の山口浩一です。
系統用蓄電池を活用したビジネスモデルとして、今後日本で増えてくる可能性があるのビジネスモデルについてご紹介したいと思います。(2回シリーズ)
第二回目は、送配電会社(TSO)向けのStorage As a Service(SaaS)モデルです。
Storage As a Service(SaaS)モデル
第一回のトーリング(Tolling)契約は、蓄電池設備保有事業者と小売電気事業者やトレーディング会社などのオフテイカーの間の契約です。
他方、送配電事業者(TSO)が蓄電池設備保有事業者と相対契約を締結する事例が欧州や米国では一般的になってきています。送配電事業者(TSO)が蓄電池設備保有事業者と相対契約を締結するのは、調整力の調達、送配電系統の混雑の緩和(送配電設備増強の回避等)や送配電設備の障害発生時に蓄電池を活用するためです。
こうした蓄電池設備を送配電事業者(TSO)が自ら所有する場合もありますが、第三者の蓄電池設備保有事業者が設備を保有し、その事業者から必要な機能を調達するケースもあり、特にその場合のビジネスモデルは送配電会社(TSO)向けのStorage As a Service(SaaS)とドイツ等では呼ばれており、さらにこうした蓄電池設備はグリッド・ブースター(Grid Booster)蓄電池と呼ばれています。
例えば、ドイツにおいてグリッド・ブースター(Grid Booster)は、本格的な送電線増強(特に連系線)ができるまでのつなぎのソリューションとしての意味合いがあります。今後も予想される再エネ増加に対応するためドイツにおいても(日本同様)送電線の増強が必要であるとされており建設計画・工事が進められていたが、実際の建設は地域住民の反対、規制・技術面での課題、資金調達面での課題などの理由で、当初計画よりも遅れているためにグリッド・ブースター(Grid Booster)の導入が進められているのが実情です。
また、グリッド・ブースター(Grid Booster)は送電障害の発生時に起動され、需給のミスマッチ、電圧変動、電源脱落などのリカバリー機能を提供することができます。グリッド・ブースター(Grid Booster)は障害検知から数秒以内にグリッドへの電力供給(放電)又は吸収(充電)することで、障害が広域に波及することを防ぎます。
さらに、混雑管理については、グリッド・ブースター(Grid Booster)の運用により、系統混雑に起因する出力抑制の発生を抑えたり、混雑による再給電コストの低減ができます。また設備計画面では送電線増強の投資の必要性を軽減したり、投資タイミングを遅らせてグリッド費用を低減するメリットも期待できます。
さて、日本において上記のようなグリッド・ブースター(Grid Booster)としての系統用蓄電池を活用したStorage As a Service(SaaS)モデルは今後出てくるでしょうか。
欧米と比べた日本の特殊性として、揚水発電設備が多いという点が挙げられます。揚水発電設備も基本的には蓄電池と同様の機能を有しており、現在のところは極力既存の揚水発電設備を活用するという方法が取られています。これは既設で減価償却済の揚水発電設備と新設蓄電池では既設揚水を活用することがコスト面で優位であるということと、国内で運用中の揚水容量が大きいためです。
まず調整力の調達という観点では、現在、送配電会社(TSO)は調整力を基本的には需給調整市場から調達することになっています。しかしながら、市場の外で、相対で調整力を調達したいというニーズが既に出てきており、揚水発電設備から相対契約で調整力を調達する事例が最近出てきています。この動きは今後広がると思われ、調整力不足が拡大し、既設揚水発電設備で賄えない状況になれば、系統用蓄電池から調整力を相対で調達する事例も将来出てくるでしょう。
次に系統混雑管理における蓄電池の活用の可能性についてです。再生可能エネルギー等がかなり普及してきているものの、日本全体ではそれほど現在系統混雑が大きな問題にはなっていません。ローカル系統の方が局所的に混雑が発生してきており、一部の送配電会社は蓄電池を活用した混雑管理の実証などを行っています。一方、地内の基幹系統ではそれほ混雑は発生していない状況であり、広域機関(OCCTO)の混雑状況想定を見ても、2029年断面でいくつかの送配電会社で局所的に混雑を発生する程度の見通しとなっています。多少の混雑が発生した場合でも出力抑制と再給電で対応することも可能なため、現在想定されている混雑レベルに対して新たに蓄電池を導入してまでそれを解消するメリットがあるかどうか、しっかりしたコストベネフィット分析が必要となるでしょう。
むしろ、国内においては、前述のドイツの事例同様、連系線の増強ができるまでのつなぎのソリューションとして蓄電池の活躍の場があるのではないかと考えています。広域機関(OCCTO)によって最近、連系線のマスタープランが発表されたが、すべてが計画通りに順調に建設が進む保証はないのではないでしょうか。また洋上風力発電設備はいつどれほど入ってくるかについても不透明な面があります。そのような場合、大型の蓄電池を効果的に活用し、連系線のボトルネックをうまく解消するという方法が合理的になってくる可能性が高いと考えられます。
蓄電池は現在電気事業法上、発電設備に整理されているものの、放電だけでなく充電も行うため、充電の時は需要設備の側面を有しています。海外などでは、発電設備でもない、需要設備でもない、特別なカテゴリーとして蓄電池を整理し、蓄電池の価値を最大限活かせるような政策・制度が導入され、新たなビジネスモデルも生まれてきています。日本においても、今後、蓄電池がよる価値を発揮できる制度的枠組みが整備され、これまでにない新たなビジネスが生まれてくることが期待されます。
弊社では、蓄電池事業に関するコンサルティングや規制・制度動向調査等を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
以 上
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