九州における洋上風力の採算性の構造

㈱Beyond Next Energy COOの上野徹です。
電気事業をデータサイエンス・ファイナンスの観点から定量的に解体し、価格・制度・収益性を数字で検証する視点を発信していきます。制度動向の整理も含め、実務に資する分析を継続的にお届けします。

2026年3月2日、北九州市若松区沖の響灘において国内最大の洋上風力発電所「北九州響灘洋上ウインドファーム」が営業運転を開始しました。九州エリアでは、2026年1月に運転開始した五島市沖1.68万kW[浮体式]に続き、3月には北九州響灘22万kW[着床式]が計画通り完工したことになります。浮体式と着床式がほぼ同時期に商用運転へ移行した点は、九州が単なる実証地域ではなく、洋上風力の本格実装フェーズへ入りつつあることを示しています。

設備利用率40%と仮定すると、年間発電量は約7.7億kWhとなります。総事業費約1,700億円を基に単純割りを行えばLCOEは10円台前半に見えますが、これは資本コストや運転維持費を考慮していない理論値です。年間固定費を1.6万円/kW/年(利用率40%換算で約4.6円/kWh相当)、WACCを6.5%と仮定し現在価値ベースで試算すると、概算LCOEは約25円/kWh程度と推計されます。
FIT価格36円/kWhとの間にはなお約11円のスプレッドがあり、投資回収の確度は相応に高い構造にあります。浮体式の五島案件は将来の深水域展開への布石であり、響灘は大規模量産モデルの先行事例です。日本の洋上風力が「導入段階」から「産業段階」へ移行しつつあることを象徴しています。

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